医療大麻の合法化が世界中で急速に進んでいます。
アメリカの次期大統領バイデン氏は「医療大麻は全米で合法化」すると明言しています。娯楽用大麻は一部の州を除いてはまだ議論を重ねていくものと思われます。
そもそも日本では大麻と聞くと「ヤバイ薬」としか思われていません。私も大麻女優として名を馳せた高樹沙耶さんのことを思い出してしまいます。
一方「医療大麻」は病気で苦しむ人たちの希望の光でもあります。研究が進むにつれて病気の治療にも使われるほどになっています。
大麻には様々な成分が含まれているのですが、その中でも主にCBD(かんなビジオール)とTHC(テトラヒドロカンナビノール)は医療的に有用性があることがわかってきました。それらの成分の配合を調整したものが医療大麻。
ちなみに医療大麻はアメリカでは首都ワシントンと30州の州法で合法化されています。
2018年9月号
てんかんと医療大麻
難治性てんかんで1日に200回も起こる発作に苦しみ続ける少女の両親が、最後に望みをかけたのが医療大麻による治療。
医療大麻が認められていないジョージア州に暮らす家族は、ある日、医療大麻が2001年から合法化されているコロラド州へ向かいます。そして少女のために調合された大麻オイル(成分はCBDがメイン)を受け取りました。
そのオイルを経口投与すると、発作の回数が1日にわずか1-2回に減り、7歳になったころには一度も発作を起こさない日もあるといいます。
この少女の両親の働きかけで、ジョージア州では医療大麻オイル(条件付き)の所持が認められるようになったのだそうです。
一時は生死をさまよう困難な状態になった少女が、数年かけてたどりついた医療大麻のおかげで救われたというストーリー。
重度自閉症と医療大麻
生後間もなく脳性麻痺と診断されて、3歳になった頃に重度の自閉症と診断された少女は17歳になった。アメリカテキサス州に暮らしています。
発作が起きると1日に3000回も自分の頭を繰り返し叩きつけることがあるほど深刻な自閉症。鼻や目の骨を折ってしまうこともあったそう。
テキサスでは医療大麻は認められていないので所持するだけで犯罪になります。
でもどんな薬でも効果は得られず、唯一発作に必ず効果を発揮する医療大麻を合法化されている州から入手しているのだそう。
11歳の時に始めた医療大麻治療のおかげで激しい発作を抑えることができ、冗談に笑うことができるようになるまで改善したと言うストーリー。
がんの痛みからの解放
足に悪性腫瘍の骨肉腫の痛みで苦しむイスラエルの16歳の少女。国の保健省から医療大麻の使用許可を受けているイスラエル人の1人。
医療用大麻を吸引すると痛みが和らぎ、化学療法で失われた食欲の回復に役立っているのだそう。
イスラエルは医療用大麻の研究開発では世界でトップクラス。THC成分を世界で初めて抽出に成功したのも、CBDに痛みを抑える作用があることを発見したのもイスラエルの研究者。
医療用大麻は、心臓発作や心的外傷後ストレス障害(PTSD)からの回復も促すとされています。
ただし、イスラエルでも娯楽用の大麻使用は違法。医療用大麻の生産や販売については政府も積極的に動いているようです。
医療用大麻 日本での動き
当然ですが日本では大麻の栽培、所持、使用、輸出入、譲渡は犯罪です。
よって、今の日本では医療大麻による治療を受けることは不可能です。そして議論は進展する気配はありません。
一方、世界を見渡せばイスラエルはもとより、ヨーロッパ・北中南米の各国では医療用の目的で栽培を認めている国も増えています。
具体的には、オランダ、オーストリア、スイス、フィンランド、フランス、イタリア、ルーマニア、ドイツ、ポーランド、ギリシャ、カナダ、メキシコ、チリ、コロンビアなど。イギリスでも緩和が進んでいるようです。(2018年9月時点)
WHOやアメリカで規制緩和の兆し
大麻にはハイになる成分が含まれている以上、ヘロインやコカインと同じく大麻(マリファナ)を禁止薬物として指定している国がほとんど。
とはいえ、医療大麻の研究が進む今、WHOでは大麻の成分の一つCBDには医療的有効性、特に抗てんかん作用があると認め、FDAもCBDを主成分とする医療用大麻の使用を承認しています。
1994年にアメリカ国立薬物乱用研究所が発表したところによると、
大麻の依存性は ニコチン、ヘロイン、コカイン、アルコール、カフェインのさらに下に位置付けられるとのこと。
日本の法律では研究さえできない
世界で合法化が進む医療大麻。研究されて重篤な病気に苦しむ患者に使われている中で、日本では研究や臨床試験でさえ厳格に禁止されています。
医療用大麻について遅れをとっているというよりは、日本人はまったく別次元の世界に暮らしているわけです。
例えばカナダでは嗜好用も医療用も大麻は完全に合法化されました。
日本人は古代から大麻と共存してきた歴史があるにもかかわらず、戦後大麻が取り締まられるようになってからタブーになったまま。
と思ってしまいます。
出典:DAYS JAPAN 2018年9月号